LIRY VOL.19 SPECIAL ISSUE “What’s Fashion?”

#6 Fashion Creation

ファッションを創る・生む理由人とは? デザイナーに聞く、ファッションプロダクト。

 

 

chapter 2 

ryoryo : Ryosuke Egashira

美意識から生まれるプロダクト。 人は、芸術的存在。

江頭良亮 さん

<リョウリョウ>ファッションデザイナー

12年より<リョウリョウ>をスタート、福岡アジアコレクション・釜山プレタポルテコレクションでコレクションを発表。現在は、TVCMや広告等の衣装制作なども手掛けてる。 

 

ーまず始めに、洋服にこだわりだし、着たり、集めたり、調べたりした自分のルーツ的なものは何でしょうか?    

洋服にこだわりだしたのは実は結構遅くて大学2年くらいの時です。その時期に出会った友達の影響で毎日小倉にある〈ヒントモアプロダクト〉というお店に通うようになります。そのお店で取り扱っているブランドやデザイナーの話、デザイナーとの出会いなど色んなファッションに関する話を聞き、洋服に対しての思いを深めていきました。

 

ー〈ヒントモアプロダクト〉とは、どういったショップだったのでしょうか?  

北九州の小倉にあるセレクトショップでインポートや、ドメスティックのブランドを取り扱っているお店です。出会ったデザイナーはメンズのデザイナーばかりですが、その中でもニューヨークで出会ったリュックいっぱいに洋服を詰めたデザイナーの話は印象的でした。今でもそのデザイナーの服は気に入って着ています。

 

ー洋服を作るという意識を持ったのはいつ頃でしょうか?    

大学は工業大学に通っていたんですが、いろいろと気持ちの変化もあり、やりたい事を仕事にしたいと思い大学とは別に服飾の学校に通い始めました。まだその頃は自分に感性的なものはないと思っていたのでパタンナーを志して学び始めました。

 

ーパタンナーを志していたところから、デザイナーへとなった経緯を教えてください。ファッションに関わりのある人なら、単純にパタンナーとデザイナーは違う職種だと分かるのですが、そこの違いも敢えて伺いたいです。

服飾の仕事をしたいという気持ちはあったんですが、そもそもあまり想像力とか絵を描たりなど芸術的な感性は持っていないと思っていました。物を作ったり計算だったりは割と好きだったのでパタンナーなら僕でも出来るかなぁと考えたのがきっかけです。今考えるとパタンナーも想像力や芸術的な感性が必要なんですが、パタンナーはデザインを読み解いて形をデザインするし、デザイナーもデザインを構築するのにパターンを考えながらデザインするので役割が違うだけで意外と同じ事をしていると思います。敢えてゆうなら色んなモノをインプットするのがデザイナーで、それをアウトプットするのがパタンナー。

 

フォトグラファー・横山ブンの連載企画「イントゥザ・ランドスケープ」にて、無機質な建築物に有機物である花々が絡まっているイメージを表現したフラワーモチーフシリーズ。

Photo / Bun Yokoyama
Styling / Keisuke Ueno (REFRAIN226)
Hair & Make / Tomoko Kido
Model / Yuka Imazuya (My Story)

 

ー影響された、感銘を受けたブランドってありますか?  

デザインとして好みなのは〈プラダ〉、〈ラフシモンズ〉とかですね。若手で言うと、〈クリストファーケイン〉とかすごく憧れます。

 

ー〈リョウリョウ〉と自身の名を冠したブランドをスタートしたばかりと、現在とでは何か違いってありますか。    

始めたばかりの頃よりファッションに対しての知識を深め作りたいモノの幅は広がりましたが、根本的な部分は今も変わりません。その根本的な部分を始めた当初は直感的に感じていましたが、現在は噛み砕いてライトに表現しようとしてます。しかし、それも試行錯誤の過程です。なぜなら始めた当初のモノの方が良いと感じる事があるからです。女性が憧れる様な女性になる為の洋服を目指して洋服作りをしてきたので、そういった部分がビジネスになりにくい要因なのかなと思います。

 

18号での、〈ペニー・ブラック〉の花に見立てた撮影。胸元のレースとスパンコールが、女性らしさを際立たせたブラックを基調としたミニドレス。

Photo / Chihiro Fuchigami
Illust / AOI mg
Styling / Keisuke Ueno (REFRAIN226)
Hair & Make / Tomoko Kido
Model / Amika Tanaka (J-MIX)

 

ーでは、ビジネスにする為には、何が必要ですか?     

世の中と自分が出来る事がマッチする所を探すことが必要。

 

ー男性がレディースをデザインする事は、決して稀ではないと思うのですが、あえて聞かせて欲しいのですが、自身が着る物ではなく、異性が着る洋服を作るというコトについてお聞かせください。    

自分が着る洋服に対しては固定的なこだわりがあるので同性である以上メンズの洋服を作ると自分が着たい服しか作れないと思いました。ファッションという大きなものを表現する為には、ものすごく自由度のなさを感じたからです。また、「美しさ」という部分では女性の方がより体現してくれると思っています。デザイナーである以上、理想が自分の枠から出られない事がファッションという仕事を続けて行く上で弊害になると感じました。もし、メンズでブランドをやっていたら、もうすでに飽きていたかもしれません。それだけレディースの洋服を作るという事はまだまだ理解できない事であり探求できる事でもある未知の領域だと思っています。

 

ーと言うと、ファッション を創作することは、「美」と言うモノを追求してると言うことでしょうか?また、人によって「美」を感じるモノ・コトは違うと思うのですが、〈リョウリョウ〉と言うブランドの服には、僕自身も「美」を感じています。繊細な素材や、丁寧な技法、細やか過ぎる装飾など、特に感じるのはシルエットです。ヒラヒラと動く裾や、ドレスライン。こういったシルエットを求める時って、一体どこからインスピレーションなどを得ているのでしょうか?  

色んなモノ・コトを見たり感じたりして美意識が派生して価値観が生まれる。その中でも建物や車、器などの形、花や自然の色などシンプルな物事に対しての美意識は人は共通してると思っています。そういう共通した美意識を切り取って当たり前に美しいシルエットを目指して作っています。

 

本誌初登場は、15号の「ボタニカル」特集の〈ビューティフルグリーン〉

Photo / Hiromasa Ohtsuka (overhaul)
Botanical / Sakurako (degas)
Styling / Keisuke Ueno (REFRAIN226)
Hair / Ayano Ura
Make / Yuka Hirata (hairmake FULL)
Model /  Berry

 

ーブランドの服を見ていると、刺繍や生地の切り替えなど全体的に細かいデザインがありますよね?こういった繊細なデザインや、ディテールは、触れたり、着たりしないと伝わらないと思うんですが、この繊細なアイデアやデザインは、ブランドとして何かしらのメッセージ的なもので、洋服を通して何かを伝えてるように思います。そういったデザインを生む上で大事にしている事は、なんでしょうか?    

オリジナリティという観点から現状最大限に出来る事を考えた結果、刺繍や染色など生地そのものを作る方法になりました。またダーツやパターン的な切り替えも装飾やデザイン的となるよう設計し、洋服に彫刻の様な一体感が出る事を理想としています。破壊による構築という万物の流れのなかですべての人が様々な経験、姿、条件において存在する芸術的存在であり表現者である。この事においてファッションが人それぞれの理想を表現する手段であると考えています。ファッションや人の揺れ動く様々な状態をトレンドとして捉え、常に破壊による構築のなかで前向きで高揚するような服作りを目指しています。

 

ーオリジナリティの話で思うことですが、昨今のファストファッションなどの流れを、どのように感じていますか?個人的には、ファッションというものが、凄く特別だった時代と違い、ある種万人のモノになっていったのかな?と。それは、多分様々な企業努力の結果でもあるのでしょうが、気軽にファッションを楽しめることになったコトで、デザイナーズブランドとしては、そういった時代とどう付き合っていますか?    

ファストファッションに否定的な思いはあまりありません。そこは同じ考えでたくさんの人がオシャレ出来るように必要とされて生まれて来たもので、今はなんとなくファストファッション離れも進んでる様な気がするしデザイナーズブランドはそれとは違う選択肢にあると思います。なのでファストファッションでファッションに興味を持って貰い、その中からステップアップでデザイナーズブランドを知って貰えばいいかなと。

 

ー最後に、〈リョウリョウ〉のブランドを、どういった人に着てもらたいと思って作っていますか?  

女性が憧れる、女性に着て欲しいです。そして、着ることで高揚感を感じて欲しいと思いながら作っています。

 

*江頭良亮さん
<リョウリョウ>ファッションデザイナー
繊細なディテールと、女性を美しく見せるシルエットにこだわったブランド。手仕事による装飾で優美さを漂わせたプロダクトをメインに、ドレスからリアルクローズまで幅広く展開。

web : www.ryoryo.jp
Instagram : @ryoryo_official

interviewer : Stylist Keisuke Ueno

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