九州プリズム!

enjoy the food story

食 ×ファッション!地域のヒト、コト、モノにワンモアラブ。ファッションと食が融合する希望の光。
確かめていたいこれまでの九州。感じていたい新しい九州。フードアナリスト田部ひとみが、“食”とファッションを繋ぐ。

 

 

 

第五回「キュウリ」

皿 他スタイリスト私物 

 

第五回「キュウリ」

 

  ぽりぽり、ざくざく、ふわふわ、とろとろ、もちもち・・・。口の中で感じる食べ物の声、そして感触。口の中で音を奏で、私たちを楽しませてくれる「食感」。食のブームにビジュアル的にウケるグルメが求められている中、実は2017年の食のブームに欠かせないのが、この「食感」である。例えば一つのメニューで、いろいろな食感を楽しむことができるギャップのあるものや、究極のふわふわやとろとろなどの極端なものがアツい。【口にいれてはじめて分かる食感は“個性”のようなもの。】その個性は、時に驚きや幸せ、安心感を与えてくれる。    

 私たちが古くから知っている食感のある食べ物はなんだろう?パッと思い浮かぶモノの一つに「お漬け物」がある。その昔、海に囲まれた日本は塩水を利用したお漬け物(当時の呼び方は塩漬け)があり「最古の食品」とも言われていた。その後、古くからある日本の格式あるコースメニューの中では「香の物」という少し洒落た名前で登場する。口の中をさっぱりさせる役目もあれば、香の物で器を洗うように食べる食べ方も生まれた。そんな古くからあるお漬け物のストーリーを聞くと、若い人が食べるイメージよりも人生の先輩方が食べるイメージを持つ人もいるだろう。漬け物=“かっこいい”“おしゃれ”なんて発想は現在の食のブームからは、なかなか想像しづらい。海外のお漬け物的存在「ピクルス」の方がこのご時世の食を少しリードしている気がする。    

 

 漬け物を食べることはあっても「買う」ということはめっきり少なくなった。スーパーではいつもいる存在で、当たり前のように「お漬け物コーナー」はあるが、正直、素通りすることも多い。主役になることはなく、どちらかというと、あると嬉しい名脇役のような位置づけだったりする。自分でも家でつくるのはキュウリの浅漬け。家庭で、短時間で簡単にできる漬け物選手権でもおそらく上位だろう。そんなキュウリ、生産量ナンバーワンは「宮崎県」ということをご存じだろうか?日本一のきゅうりを食べるために、わざわざ「きゅりパー」と呼ばれるパーティが開催されるほど、宮崎県は街をあげてきゅうりを盛り上げている。9割以上が水分のきゅうり。新鮮な水や空気、日本のひなたと呼ばれるほど温暖な気候にめぐまれた宮崎県で日本一になるのも納得である。     

 

 古くから伝わる漬け物からきゅうりをリンクさせていったが、きゅうりといえば忘れてはならない存在がいる。キュウリを皿に乗せた日本の三大妖怪、「カッパ」だ。水の神様が落ちぶれた姿が、カッパという説がある。中国から渡ってきたと言われるカッパ。とある1匹は、9000匹も子分を連れて熊本県に住んでいたとのこと。とんでもない総長である。そのうち様々な理由で熊本県から福岡県の筑後川に移ってきたとか。そういえば、福岡でも人通りの多い天神地下街にはカッパの泉がある。他にも様々な場所にカッパの銅像やモニュメントがあることを、ふっと思い出す。意外にカッパ大国の福岡。その昔、福岡の地行浜あたりのカッパは、普通の川住まいのカッパと違い、海に住んでおり酒飲み河童と呼ばれていたとか。面白い。飲み場所食べる場所が多い福岡だけに、思わず納得してしまう。カッパが大好物のきゅうり。きっと頭の皿にのせていたきゅうりの美味しい食べ方を、福岡のカッパは誰よりも先に知っていたのかもしれない。それが、お漬け物(塩漬け)なんてね。

 

 

information 

宮崎県福岡事務所 www.f-miyazaki.jp

福岡市中央区天神2-12-1 天神ビル8F
☎092-724-6234

 


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“九州”のおもしろさは地域のヒト・コト・モノである。まだ見ぬ、まだ知らずの地域の魅力を食のフィルターを通して発信するTabennet(たべんねっと)がLIRY読者にお届けする独自の世界感。食の情報発信の専門家「フードアナリスト」田部ひとみが伝えたい九州の食。


PHOTO / HAJIME MATSUMOTO (hpc)
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EDIT / HITOMI TABE (TABENNET)