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キニナル!<マンチェスター・バイ・ザ・シー>

 

 

今週、今頃だけど録画してもらっていた第89回アカデミー賞授賞式生中継を5時間観た後に、本日、主演男優賞、脚本賞を受賞した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の試写へ。

 

「ジェシー・ジェームズの暗殺」「インターステラー」のケイシー・アフレックが主演し、心を閉ざして孤独に生きる男が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく姿を描いたヒューマンドラマ。「ギャング・オブ・ニューヨーク」の脚本で知られるケネス・ロナーガンが監督・脚本を務め、第89回アカデミー賞では作品賞ほか6部門にノミネート。アフレックが主演男優賞、ロナーガン監督が脚本賞を受賞した。プロデューサーにマット・デイモン、主人公の元妻役で「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、兄役で「キャロル」のカイル・チャンドラーが共演。アメリカ、ボストン郊外で便利屋として生計を立てるリーは、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去の悲劇と向き合うことでもあった。
映画.comより

はじまってからずっと感じていたことがあって、
それが“もどかさしさ”だと気付いたのは中盤ぐらい。
なんてことないシーンの中に“もどかしさ”が散りばめてあって、胸が苦しくてしょうがなかった。誰とも交流しない、心を閉ざした主人公リー(ケイシー・アフレック)のもどかしさがずっと続く感じがじわじわと自分の中に入ってきて、悲しかった。

主演男優賞をとったケイシー・アフレックはもちろんだけど、
助演女優賞にノミネートされていたミシェル・ウィリアムズがワンシーンですべてをかっさらっちゃった気がする。
登場人物それぞれが“もどかしさ”を抱えて、それを観ているこっちもずっと感じているこの作品の中で、唯一その“もどかしさ”を吐き出す。
アカデミー賞授賞式で、ノミネート作品の紹介でそのシーンが流れたけど、私は英語全くわからないのと、切り取っただけのそのシーンを観ただけだったのでよくわからなかったけど、今日この映画を観て、そのシーンを観て、このシーンがどれだけ重要で、唯一のシーンだったかがわかって圧倒された。
もちろん、それはこの映画の一部でしかなけど、
この映画は悲しくて悲しくて、でも可笑しくてほっとする。
その悲しさだけを映画のテーマにすればたぶんもっと重苦しくて観ている私達も打ちのめされ、それを乗り越える主人公を望む作品になったんじゃないかと思う。でもそうじゃなかった。
観終わった後にこれもじわじわと悲しみの感情がほぐれていく気がした。
たぶん、主人公のリーが心を開かなくなって時間が経っているのに彼の時間は止まっていて、
心の深いところに感情を閉じ込めてしまっているので、観ている私たちは彼の悲しみに最初気付かない。違和感はあるけど、その深さを感じさせないのだ。
でも観ていると、彼が経験した悲劇を知り、その事実に言葉が出ない。
故郷の街に帰るということはその事実と向き合うことでもあるから、彼にとっては逃げてきた街・・・向き合うことができない世界に静かに心を潜めているだけ。
目に見えることで表現することは簡単だけど、言葉でもなく空気で心を表現していたケイシー・アフレックと脚本を書いたケネス・ロナーガンって素晴らしい。

脚本を書いたのは監督のケネス・ロナーガンだけど、
構想とこの作品を世に生み出したのはマット・デイモンだそうで、
プロデューサーとしてこの作品にサインし、主演と監督を務める計画をしてたけど、スケジュールの都合で主演と監督を降板、マット・デイモンが脚本依頼をしたケネス・ローガンが監督を引き継ぎ、主演をマット・デイモンの親友であり類友であるケイシー・アフレックが引き継ぐ。

こんな映画を作り出しちゃう彼らってすごい。
映画はそれぞれの時代に傑作を生み出すんだなと思うと、
この作品を観れたことに感謝します。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は5/13(土)KBCシネマ他にて公開。

 

 

 


シネマコラムニスト 山内亜紀子

1974年生まれ。長崎県壱岐市出身。ラジオ制作、フリーペーパーで広告・PR の仕事に関わると同時に、映画記事担当の編集として、映画紹介、単独インタビュー、コラム、舞台挨拶や囲み取材を担当。その後、ホテルの広報に転職。2015年よりフリーとなり外部委託の広報として各社の広報業務を担当。また、継続して映画ライターとして活動中。

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