九州プリズム!
enjoy the food story
食 ×ファッション!地域のヒト、コト、モノにワンモアラブ。ファッションと食が融合する希望の光。
確かめていたいこれまでの九州。感じていたい新しい九州。フードアナリスト田部ひとみが、“食”とファッションを繋ぐ。
第四回「クラシックコックソース」
ハット ¥3000 (荒木帽子店) 他スタイリスト私物 荒木帽子店 ☎092-281-2120
第四回「クラシックコックソース」
昭和2年。福岡市清川でソース専門メーカー「コックソース」が生まれた。昭和がスタートしてすぐだった。コックソースが生まれて今年で90年。創業当時の景色を切り取った写真の一枚は、まだモノクロ。当時、工場では、様々な試行錯誤を経て生まれたソースの美味しさ、色鮮やかな未来に胸を膨らませ、皆がキラキラと瞳を輝かせていただろう。昭和懐かしの味の「クラシックコックソース」は化学調味料・保存料などは使用していない。万能ウスターソースというような存在だ。そもそもイギリスで生まれたウスターソースは明治に日本へ、そして大正・昭和に伝わっていく。まだ文字が右から書かれている時代だ。クラシックコックソースも、生まれた当時の昭和らしいレトロなラベル。右書きの文字であたたかみのある彩りのラベル。コロッケやとんかつ、やきそば、キャベツの千切り、カレー、そのほか様々な料理にかけて食べるとオススメとのこと。「焼きそば・・・か。」料理好きの母のおかげで、私は嫌いなものが一つもない。ただ、ウスターソースが、ガッツリかかった料理や、ソースのような味が全面に出る料理が食卓に出る機会が少なかった。そのせいなのか、これまで家庭で「焼きそば」を作ろうという発想になることがほとんど無い。何度か、焼きそば専用の液体ソースや、焼きそば麺に付属している粉ソースで作ろうと試みたが、お気に入りの味が見つからない。お祭りの露店や飲食店で「焼きそば」の文字が見えても関心はなく、焼きそばを食べよう。作ろう。という気持ちが込み上げてくることが無かった。クラシックコックソースに出逢うまでは。
ソースのラベルに書かれていた料理例をみて、久しぶりに焼きそばを作ってみたくなった。フライパンに炒めた野菜や肉、麺、そしてクラシックコックソース。市販のウスターソースは「どろっ」と出てくる。そのイメージでこのソースをかけようとすると、醤油のように「さらっ」と勢いよく出てくるからびっくりする。熱したフライパンから高く立ち上るソースの香り。わくわくした。早く食べたい。食欲をそそるソースの香りが空腹を刺激する。なんとなく作って、できあがった焼きそば。夢中で食べた。3日間連続で作って食べた。 優しい味のソースは、素材をソースの味で完全に覆い包まず、素材の味を邪魔しない。さりげなくも芯のある味。そしてなんだか懐かしい。幼い頃食べた食卓の懐かしのやきそばの味は、記憶をたどっても鮮明に思い出せない。しかし、クラシックコックソースで作った焼きそばは、一生のうちに摂る限られた回数の食事の中に、これから組み込まれていくことになった。何気なく作った焼きそばはそのくらい感動した。
音楽で言うと、クラシックコックソースは、いつもより半音高いという意味の「♯(シャープ)」がついた「おいしい」を教えてくれた。老舗の・・・、懐かしの・・・、クラシックコックソースは、これからの「攻める伝統」と「守っていく伝統」のバランスをとりながら人々の「美味しい」の声を奏でていかなければならない。新しいベーシックを生み出す力は、指揮者であるコックソース代表の内なるクレッシェンドな情熱が原動力。そんな想いを多くは語らない代表だが、クラシックコックソースにはしっかり味わいとして宿っている。
クラシックコックソース・1本 ¥380(税別)
information
コックソース株式会社
福岡市中央区清川2丁目16-7
☎092-531-5561
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Tabennet
“九州”のおもしろさは地域のヒト・コト・モノである。まだ見ぬ、まだ知らずの地域の魅力を食のフィルターを通して発信するTabennet(たべんねっと)がLIRY読者にお届けする独自の世界感。食の情報発信の専門家「フードアナリスト」田部ひとみが伝えたい九州の食。 |
PHOTO / AIRI MATSUO (ar photo)
STYLING / KEISUKE UENO (REFRAIN226)
HAIR & MAKE / TOMOKO KIDO (CO 5)
MODEL / YUMI NAKATA (elegant promotion)
EDIT / HITOMI TABE (TABENNET)