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九州プリズム!

enjoy the food story

食 ×ファッション!地域のヒト、コト、モノにワンモアラブ。ファッションと食が融合する希望の光。
確かめていたいこれまでの九州。感じていたい新しい九州。フードアナリスト田部ひとみが、“食”とファッションを繋ぐ。

第二回「しばたけ<焼き魚>」

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第二回「しばたけ<焼き魚>」

幼い頃。焼き魚が苦手だった。それは「骨」があったから。うまく骨がとれない。骨なんてなければいいのに。幼かった私は、我慢をするように焼き魚を食べていた。

時は過ぎ、オトナになった現在。スーパーの惣菜コーナーで偶然に、そして必然的に出会うことになる。堂々と「骨なし」のシールを身につけた焼き魚に。一種の作品ではなく、骨アリの魚を横目に、登場したばかりの最新機器のように堂々とした様子で並んでいた。不思議。感動とともに、少しばかり寂しさが芽生えてしまった。骨アリの魚を食べる時間は、私たちに何を教えてくれた?細かく箸を動かし魚の身をほぐす。家族が食べる食べ方を見よう見真似で、一生懸命に箸を動かす。骨は、私に箸を細かく使う動きを美味しさとともに教えてくれた。四苦八苦しながらも、魚の身を上手くほぐした自分への御褒美のように。そうそう、骨の周りの身は柔らかく美味しい。オトナになって脂身のある魚とともに、美味しいお酒を堪能するひととき。子供の時に苦手だった焼き魚が好きになったきっかけでもある。

骨のある魚を接待や好きな人の前で食べるとき、緊張する人もいるであろう。もっと魚を綺麗に食べれたら、どれだけかっこいいだろう。今日こそは上手く食べようと魚に箸を入れる。骨ある命は、教科書に載っていない楽しさや、時に緊張も教えてくれた。フィッシュボーン(魚の骨)という意味のヘアアレンジ、ヘリンボーン(ニシンの背骨の形)という模様のスーツなど、ファッションの中にも存在する魚の骨は、着飾る楽しさも教えてくれた。

私たちのカラダは骨あるおかげで、立って、座って、歩いて、走る。大げさにいえば、出会ったり、感動したり、悲しんだり、悔しがったり、感謝したり、すべての人生は骨が無いとその人生に色は、彩れない。魚の美味しさを知るきっかけは骨なしの魚でいいかもしれない。「骨のある人」。そんな言葉は着飾れるものではない。力強くしっかりとした様子は、中からにじみ出るもの。広い海や流れの早い川、様々な環境で、それぞれの困難を乗り越えて、生き延びた魚たち。その魚たちは私たちに命をかけて食卓で教えてくれることがある。

難が無い人生は無難、難の有る人生は有難う、と。骨ある魚をほぐす作業は困難かもしれないが、骨の魅力に気づくときには一歩だけ骨ある私に近づいていたい。

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information 

しばたけ営業店舗(九州)

イオン九州 福岡店・イオン九州 筑紫野店 イオン九州 伊都店・イオン九州 香椎浜店
www.shibatake.co.jp

スピンズ ☎092-721-1311

 

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Tabennet 
“九州”のおもしろさは地域のヒト・コト・モノである。まだ見ぬ、まだ知らずの地域の魅力を食のフィルターを通して発信するTabennet(たべんねっと)がLIRY読者にお届けする独自の世界感。食の情報発信の専門家「フードアナリスト」田部ひとみが伝えたい九州の食。

PHOTO / HAJIME MATSUMOTO (hpc)
STYLING / KEISUKE UENO (REFRAIN226)
HAIR & MAKE / CHINATSU SUNAKAWA (hairmake FULL)
MODEL / KASUMI OONO (4shokuteiri)
EDIT / HITOMI TABE (TABENNET)